副業というと、自由業やフリーランス、コンサルタントなどのイメージを根強く持たれている方も多いかと思います。しかし昨今、働き方改革や新型コロナウィルス感染拡大による影響などにより、企業勤務の正社員を含め、あらゆる職業形態において副業に関心を持つ人が増えていると言います。
厚生労働省によるアンケートを基にしたデータ(2021年 労働政策審議会安全衛生分科会による「副業・兼業に係る実態把握の内容等について」より)および、株式会社リクルートキャリアによるデータ「兼業・副業に関する動向調査(2020)」を詳しく見ていくと、ある傾向が見えてきます。
副業における昨今の傾向について、企業勤務の正社員における副業への意識から紐解いていきましょう。
副業をしている人の割合は約1割
厚生労働省によるインターネットを使った調査によると、副業をしている人の割合は全体の9.7%と約1割の人が副業をしていることがわかっています。
本業の就業形態別では、最も副業をしている人が多い職業は「自由業・フリーランス(独立)・個人請負」で29.8%、2番目が「自営業」で19.4%、そして「会社役員」が3番目で15.3%と続いています。
副業をしている理由のトップは「収入増」
副業をしている人が副業を始めた理由で最も多いのは、「収入を増やしたいから」で56.6%、2番目に多いのが「1つの仕事だけでは収入が少なすぎて、生活自体ができないから」で39.7%、3番目に多いのが「自分で活躍できる場を広げたいから」で19.8%、4番目に多いのが「時間のゆとりがあるから」で18.6%、5番目が「さまざまな分野の人と繋がりができるから」で13.6%と続いています。
このように副業をしている理由の大半が「収入を増やすことが目的」である一方で、「時間のゆとりがあるなかで更なる力を発揮したい」と考え副業を行っている人も一定数存在し、会社役員はこちらに当てはまることがわかります。
副業をしている人の本業の収入状況は2極化
副業をしている人の本業の収入状況を見てみると、最も多いのが「5万円以上10万円未満」で13.5%、2番目に多いのが「10万円以上20万円未満」で12.2%、3番目に多いのが「5万円未満」で10.9%となっています。そして興味深いことに、4番目に多いのは「70万円以上」で10.3%となっており、副業をしている人の本業の収入状況は2極化しています。
副業をしている人のなかには、生活苦で必死に働く自由業や自営業などの層と、時間のゆとりのなかで向上心をもって副業に挑戦する会社役員の層が存在していることが、このことから推察できます。
副業をしている人の年齢層の傾向は?
副業をしている人の年齢層は、最も多いのが40代で28.3%、2番目に多いのが50代で26.8%、3番目が30代で19.7%、そして60代の12.6%、20代の11.3%と続きます。
20代の割合は少ないものの、昨今では最も増加傾向が強くなっています。
企業勤務の正社員で最も副業をしている年代は20代後半~30代前半
次に、企業勤務の正社員に絞った統計を見てみましょう。
企業に勤める正社員のうち、実際に副業をしている年代を見てみると、最も多いのが20代後半で全体の21.0%、2番目に多いのは30代前半で18.8%、そして30代後半の17.2%と続きます。
この結果は、最も多い年齢層が40代という副業者全体の結果とは異なる結果となっており、正社員の20代の副業が数はまだ少ないものの、増加傾向であることがわかります。
また、本業の年収が低いほど「副業をしたい」と思っている正社員の割合は高くなっていることから、企業勤務の正社員の40代~50代、いわゆる中堅社員は、本業の年収に対する満足度が増すとともに、会社役員のような副業に挑戦するほどの時間的余裕やキャリア、機会を持ち合わせていない傾向が推察されます。
企業勤務の正社員のうち副業に意欲的な人は半数以上
企業勤務の正社員のうち「これまで副業の経験はないが実施意向がある人」は、30代前半(30~34歳)で最も高く50.3%となっており、およそ半数の人が副業に興味を持っています。
そして興味を持ちつつも実際には副業できていない理由としては、「会社が副業を許可してない」が最も多く33.2%。次に、「副業の始め方がわからない」で26.4%、そして「よい副業がみつからない」が26.1%となっています。
コロナ禍が副業を始めたきっかけに
副業を始めた時期を見てみますと、現在副業をしている人のうち30.8%が2020年2月以降となっており、ちょうど新型コロナウィルスによって社会活動の自粛が始まった時期となっています。
本業の収入減、リモートワークの普及、余暇の増加が、副業への取り組みの機会となっていることが見て取れます。
企業勤務の正社員による副業の傾向
正社員が行っている副業で最も多いのは、ブログやアフィリエイトなどの「WEBサイト運営」です。2番目に多いのは「配送・倉庫管理・物流」、3番目が「ライター」、そして4番目は「eコマース(ネット通販)」となっています。
いっぽうで、地方の中小企業や官公庁と、大企業の副業人材を引き合わせるマッチングサービスも生まれており、都市にいながら本職のスキルを活かして地方の仕事を担う働き方も可能となっています。
副業をする人の増加傾向は、企業の副業への理解次第
このように、企業勤務の正社員に副業に意欲を持つ人が多い状況のなか、勤務先の企業が副業を許可していないために副業をはじめられないという人が多い傾向が、はっきりとわかります。
実際に、コロナ禍で本業の年収が減った正社員の52%が「副業をしたい」と回答し、副業に意欲的な正社員の増加傾向にあること、リモートワークの普及などで時間的余裕が増えている傾向などから、今後、副業を受け入れる企業数の増加に比例して、副業に挑戦する人は、20代~30代の企業勤務の正社員を中心に一気に増加していくことでしょう。