ネットショップを開業する場合、特定商取引法に基づいて、事業者の住所を公開する必要があります。
作業スペースや在庫管理のために事務所を借りている場合は良いですが、自宅を事務所として利用する方にとってはプライバシー保護の観点から問題があります。
ご自身や一緒に住む家族を守るためにも、自宅でネットショップを開業する際には、バーチャルオフィスの利用がおすすめです。
本記事では、ネットショップの住所を自宅に設定する問題点やバーチャルオフィス契約の手順、ネットショップの事務所にバーチャルオフィスを利用する際のよくある質問などについて解説します。
ネットショップの開業で必要な表記項目
ネットショップは、特定商取引法※の対象となる類型の『通信販売』に該当し、ホームページに公開する項目がいくつか定められています。
※特定商取引法は、事業者による違法・悪質な勧誘行為等を防止し、消費者の利益を守ることを目的とする法律です。
ネットショップの開業に必要な表示項目は以下のとおりです。
特定商取引法第11条の『広告の表示』における表示事項を一部抜粋しています。
販売価格
代金の支払い時期、方法
商品の引渡時期
商品の返金特約に関する事項
事業者の氏名(名称)、住所、電話番号
販売価格、送料以外に負担すべき金銭の内容及び額面
上記のとおり、『住所』は表示が必要な項目のひとつです。
事業所の住所を『自宅』にするデメリット
実店舗を構えないネットショップは、開業にかかるコストや物件のランニングコストを大幅に抑えられることが魅力です。
Amazonや楽天市場に加え、BASEやSTORESといった簡単にネットショップを開設できるプラットフォームが近年誕生し、副業として物販を始める方も急増しています。
比較的手軽に始められるビジネスではあるものの、自宅住所をそのまま使用・公開すると次のようなリスクも考えられるため、注意が必要です。
- 個人情報を悪用される
- 自宅に大量のDMが届く
- 梱包資材や印刷会社などの営業が飛び込みで訪問し、対応に追われる
住所のほかにも、電話番号をホームページ上に表示する必要がありますが、自宅の固定電話または個人携帯の電話番号の使用はおすすめできません。
商品の問い合わせや営業の電話が昼夜関係なくかかってくる可能性があり、対応に追われることとなります。
ネットショップは夕方~就寝前の深夜に利用されることが多く、特に夜中の問い合わせは、非常に大きなストレスとなりうるでしょう。
これらのさまざまな問題を解決してくれるのが、住所も電話番号も格安で利用できる『バーチャルオフィス』です。
ネットショップの事業所の住所は『バーチャルオフィス』がおすすめ
バーチャルオフィスとは、開業に必要な項目のひとつである『住所』をレンタルできるサービスです。
バーチャル(virtual)、つまり仮想のオフィスなので実際に仕事を行うスペースがなく、月額1000円弱という低価格から利用できる場合もあります。
バーチャルオフィスを利用すると、自宅住所をインターネット上に公開しなくて済むため、安心してネットショップを開設することが可能です。
バーチャルオフィスには、自宅とは別に住所を用意できるだけではなく、次に挙げるメリットも存在します。
- 事務所を契約するよりも大幅にコストカットができる
- ビジネス街の住所を使用できることで信頼につながる
- 03番号(固定電話番号)を取得できる
- 郵便物の転送、電話代行・転送などのオプションサービスが利用できる
ネットショップでの買い物における顧客の不安やよくあるトラブルに「商品画像と実物が違う」や「商品が届かない」などが挙げられます。
そのため、顧客に対していかに信頼感を与えるかが重要です。
例えば、ホームページに記載されている住所がアパートの一室だったり、よく知らない地域だったりするよりも、ビジネス街に事務所がある会社の方が安心できますよね。
また、バーチャルオフィスによっては貸し出しを実施している専用の03番号(固定電話)を表示していれば、より会社としての体裁が整うでしょう。
電話代行/転送サービスといったオプションを利用することで、スムーズな電話対応のシステムも構築できます。
このようにバーチャルオフィスは、ネットショップの売り上げアップに活用できる魅力的なサービスです。
バーチャルオフィスの契約の流れ
バーチャルオフィスの申し込みから契約までの流れは、非常にシンプルです。
- 申し込む
- 本人確認
- 決済・契約完了
利用したいバーチャルオフィスの会社を探し、申し込みます。ホームページの申し込みフォームに記入して申し込めることがほとんどです。
バーチャルオフィスの契約が結べるかどうかの審査を行います。期間は1~4日です。早いときには即日結果が出ることもあります。
審査が通ったら、決済をし、契約締結したら契約完了です。サービスの利用ができるようになります。
※ここで紹介した流れは一般的なものです。会社によって異なることもありますので、申し込み前にそれぞれの会社のホームページなどで流れを一応確認するようにしてください。
ネットショップのバーチャルオフィス活用でよくある質問
ネットショップのためにバーチャルオフィスを利用を検討する際に、多くの方が疑問を抱くポイントは以下の3点です。
- 返品交換があった場合はどうする?
- 開業届に記載する住所は?
- 法的な問題は?違法ではない?
最後に、この3つの疑問をそれぞれ詳しく解説していきます。
返品交換があった場合はどうする?
顧客から返品交換したい旨の連絡があった際、2通りの対応方法があります。
- お客様サポート住所として、自宅宛てに郵送してもらう
- 事務所(バーチャルオフィス)宛てに郵送してもらい、荷物の転送を行う
自宅宛てに商品を返送してもらった方が、スムーズに対応を行うことはできますが、バーチャルオフィスを使用することも可能です。
多くのバーチャルオフィスには郵便物の受け取り・転送サービスがあり、バーチャルオフィスに届いた荷物を指定した住所まで送ってくれます。
商品の不具合などによって荷物が返品された場合、クレームやショップへの低評価につながらないよう適切に対応する必要がありますが、郵便物の転送サービスがあれば安心です。
ほかにも、代引きの受け取り拒否や不在の荷物の保管期間切れなどの理由で商品が返送されることも考えられます。
バーチャルオフィスによっては、郵便物転送サービスが有料オプションとなっていることもありますが、ネットショップを運用する場合に必ず利用したいサービスです。
開業届に記載する住所は?
開業届にも、バーチャルオフィスの住所は利用可能です。
「居住地(納税地)とバーチャルオフィスの住所が離れていると不審に思われるのでは?」と不安に思うかもしれませんが、その心配は必要ありません。
開業届には納税地以外の住所を記載できる項目があり、バーチャルオフィスの住所で開業することができます。
バーチャルオフィスの住所で登録すると、バーチャルオフィスの利用料も経費として計上できるため、特別な理由がない限り開業届に記載するべきでしょう。
ただし、一部開業届への登記を禁止しているバーチャルオフィスもあるため、契約前には必ず確認するようにしましょう。
法的な問題は?違法ではない?
「そもそもレンタルした住所をホームページに掲載することは、違法ではないのか?」と思うかもしれませんが、特定商取引法の観点からみても問題はありません。
注意点として、開業届と同じく、バーチャルオフィスによってはネットショップへの住所の記載を禁止している場合があります。
「せっかくバーチャルオフィスを契約したのに、ネットショップに住所が使えないからお店を開けない……」という失敗がないよう事前確認が必要です。
まとめ
今回は、バーチャルオフィスがネットショップの住所表記におすすめの理由を解説しました。
バーチャルオフィスは、プライバシーが保護できる、スムーズな顧客対応ができる、ショップの信頼感を高められるなどメリットが多く、ぜひ利用してほしいサービスです。
バーチャルオフィスを上手に活用して、ネットショップの運用に役立ててくみてださい。