バーチャルオフィスの利用を検討している個人事業主や法人経営者の中には、「バーチャルオフィスを住民票の登録住所として使いたい」と考えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
本記事では、バーチャルオフィスで住民票登録ができるのかどうかや、バーチャルオフィス住所の主な用途、契約時に住民票の提出が必要かどうかなどを解説します。
バーチャルオフィス住所で住民票登録はできない
バーチャルオフィスの住所を住民票登録に使うことはできません。
「子どもを越境入学させたい」「海外移住時に住民票を残しておきたい」などバーチャルオフィスを住民票登録に利用したい方は多いかもしれませんが、残念ながらそのような使い方はできません。
バーチャルオフィスは、あくまでも住所や電話番号を貸してくれるサービス。
住所は事業用の住所であり、生活拠点のための住所ではないためです。
住民票登録を行いたい場合は、住居などバーチャルオフィスとは別の住所を用意しなければなりません。
なお、転入や転出の際の住所としても使用できないため注意してください。
バーチャルオフィスの住所を利用してできること
バーチャルオフィスの住所は住民票には登録できませんが、ビジネス用途であればさまざまな目的で使用可能です。
ここでは、バーチャルオフィスの住所にどのような用途があるのか解説します。
ホームページや名刺等への記載
バーチャルオフィスの住所は、自社のホームページや名刺、パンフレットなどに記載可能です。
バーチャルオフィスによっては、都心一等地の住所を借りられるケースもあるため、住所を記載することでクライアントのイメージアップにもつながります。
マンションの一室を会社住所としている企業と一等地を会社住所としている企業とでは、印象に大きな違いが出ると考えられるでしょう。
ほかにも、自宅の住所を公開したくない場合、バーチャルオフィスの住所を利用すれば、取引先など第三者に自宅を知られる心配がありません。
なお、バーチャルオフィス経由で取得した電話番号も、ホームページや名刺、パンフレットに記載できます。
特に個人事業主の方は、携帯電話番号を連絡先として記載しているケースもありますが、固定電話番号を記載できれば「この人はちゃんとビジネスをやっているんだな」とクライアントからよい印象を受けられるでしょう。
『特定商取引法に基づく表記』への記載
ECサイトやインターネットショッピングを展開する場合、「特定商品取引法」への対応が必要となりますが、バーチャルオフィスの住所は同法にも対応しています。
特定商取引法とは、インターネットショップ運営者など、特定の取引による違法行為の防止および消費者の利益保護を目的としている法律です。
もしECサイトやインターネットショッピングを運営するのであれば、以下の「特定商取引法に基づく表記」を記載しなければなりません。
- 販売価格(送料も表示する)
- 代金の支払い時期・方法
- 商品の引渡時期
- 売買契約の申込みの撤回・売買契約の解除について
- 事業者の氏名、住所、電話番号
- 販売業者の代表者または通信販売業務の責任者の氏名(事業者が法人かつ電子情報処理組織を利用して広告を行う場合)
- 申込みの有効期限(ある場合)
- 販売価格、送料等以外に購入者が負担する金銭の内容と金額(ある場合)
- 商品に隠れた瑕疵(かし)がある場合の販売業者の責任について
- ソフトウェアに関する取引である場合にはソフトウェアの動作環境
- 売買契約を2回以上継続して締結する必要があるときはその旨と販売条件
- 商品の販売数量の制限等特別な販売条件があるときにはその内容
- 請求によりカタログ等を別途送付する場合でそれが有料であるときにはその金額
- 電子メールによる商業広告を送る場合は事業者の電子メールアドレス
上記の項目のうち、『事業者の住所』にバーチャルオフィスの住所が利用できます。
ただし、バーチャルオフィスの住所を記載している場合は、その旨に関する注意書きを添えておくほか、必要に応じてすぐに本来の住所を伝えられるようにしておかなければなりません。
開業届や法人設立届出などへの記載
個人が新たに開業する場合は『個人事業の開業・廃業等届出書』、法人を新たに設立する場合は『法人設立届出書』の提出が必要となりますが、この届出書に記入する住所にもバーチャルオフィスの住所が使用可能です。
『個人事業の開業・廃業等届出書』や『法人設立届出書』にバーチャルオフィスの住所を記入すると、バーチャルオフィスの住所地を所轄する税務署に納税することとなります。
納税地の違いによって税額が変わるわけではありませんが、バーチャルオフィスの住所を記入する方は覚えておきましょう。
なお、納税地は後から変更できるため、バーチャルオフィスの移転などにも対応できます。
郵便物や荷物の受け取り
事業を行なっていると、クライアントやお客さまから荷物が送られてくるケースもありますが、その届け先としてバーチャルオフィスの住所を提示できます。
バーチャルオフィスによっては、郵便物や荷物の受け取りサービスを提供しているためです。
仕事関連の荷物は自宅ではなくバーチャルオフィス宛に届ければ、プライベートの荷物と混同する恐れがありません。
また、バーチャルオフィスで受け取った荷物は転送先の指定ができるほか、自分で取りに行くこともできます。
これからバーチャルオフィスを探す方は、荷物の受け取りサービスが利用できるか確認するといいでしょう。
その際、荷物転送の可否や受け取り可能な荷物の大きさなどについてもチェックしておくと、後々のトラブルを回避できます。
バーチャルオフィス契約時に住民票の提示は必要?
バーチャルオフィスの契約を結ぶ際には、住民票などの本人確認書類を提出しなければなりません。
これは、犯罪による収益の移転防止と国民生活の安全と平穏の確保、経済活動の健全な発展などを目的とした『犯罪収益移転防止法』によるものです。
この法律では、特定の事業者が取引を行う際の本人確認などについて定められており、バーチャルオフィスにも適用されます。
本人確認書類の種類は、免許証やパスポートなどバーチャルオフィスによって異なりますが、中には住民票でも対応可能なケースもあります。
本人確認書類の詳細は、必ず各バーチャルオフィスの規約などで確認してください。
まとめ
今回は、バーチャルオフィスで住民票登録ができるのかどうか解説しました。
バーチャルオフィスの住所は事業用の住所であるため、住民登録には利用できませんが、ホームページや名刺への記載や開業届、法人設立届出への記入には利用できます。
事業用の住所が必要な方は、ぜひバーチャルオフィスの利用を検討してみてください。