独立起業して事業をおこなう際にはオフィスが必要不可欠です。「自宅で完結する事業であればわざわざオフィスを設けなくても問題ないのでは?」と思われるかもしれません。しかし、事業を発展させ会社規模を広げていくのであれば、何らかの形で仕事場所を用意するべきだといえます。
とはいえ、数ある物件の中から1つのオフィスに絞るのはなかなか大変なもの。
ここでは「オフィスの選び方のポイント」をご紹介するとともに、混同されがちなレンタルオフィス・シェアオフィス・バーチャルオフィスの違いなどについても解説します。起業の際のご参考に、ぜひご覧ください。
独立・起業時のオフィス選び! ポイントは?
「オフィスを選ぶ」といっても、どのように選べばいいのかわからない……という方は少なくないでしょう。特に、初めて起業するのであればなおさらのことです。
オフィスを選ぶ際のポイントをご紹介しますので、順にチェックしていきましょう。
①立地
オフィスを構えるにあたって特に重要なのが「立地」です。
オフィスの場所に対する優先順位は人それぞれですが、「アクセスがしやすい場所がいい」「土地にネームバリューがある」「同業種が集まる場所がいい」などを考えてみましょう。
また、エリアによっては特定の業種が集まっている場合も少なくありません。このようなエリア特性を持つ場所では、会社同士の結びつきが強くなる傾向があります。
こうしたエリアにオフィスを構えた場合、取引や発注・納品などがスムーズになったり、新規顧客獲得率の向上につながったりする場合もあるでしょう。
ちなみに、来客がほとんどない事業の場合は、立地にこだわる必要はありません。自宅で作業をおこない、会社の住所自体はバーチャルオフィスを利用する……という方法でも問題なく事業を継続できます。
②費用
事業を続けていくうえで避けて通れないのが、コスト面の問題です。
起業したての頃は、いかに初期費用・賃料・水道光熱費といった「ランニングコスト」を抑えられるかが重要になります。コストを抑えながら利益を多く得るためにも、資金に見合ったオフィス方式を選択しましょう。
オフィスのコストは、賃貸オフィス>レンタルオフィス>シェアオフィス>バーチャルオフィス、の順に価格が低くなります。事業内容や人数に応じたオフィス形式を選ぶのはもちろんですが、少しでも安く事業をスタートしたいのであれば、水道光熱費や通信費のかからないサービスを選ぶとよいでしょう。
③広さ、機能性
デスクワークの場合のオフィス面積は、従業員1人につき10㎡以内が目安です。
とはいえ、オフィスに必要な広さや間取りは、事業内容や従業員数によって異なるのが事実でしょう。
PC1つでできる仕事であれば、ちょっとした作業スペースだけで事足りますし、物品販売などの事業では商品を置くスペースが必要になります。
他にはオフィスの間取りや、機能性も重要です。
来客が多い業種であれば、会議室や応接間が利用できるオフィスが便利です。従業員を複数雇用している場合は、男女別のトイレが設けられているオフィスを利用した方が安心できるでしょう。
また、ネットでファイル等をやり取りすることが多い場合は、通信環境が安定しているところを選ぶのも重要です。近年ではクラウド型サービスを利用して事業をおこなう会社も多いでしょう。共用インターネット回線の場合、回線が貧弱だとアクセスが集中したときに通信が不安定になるおそれがあります。
安定したネット環境を求める方は、独立回線が利用できるオフィスを探してみましょう。
④法人登記ができるか
法人化を考えている方は、オフィスを構える場所にも注意が必要です。
例えば自宅の賃貸マンションやアパートなどの場合、賃貸契約書で法人登記ができないとされているケースが多くみられます。管理会社や大家さんに相談すれば登記が可能になる場合もありますが、NGが出てしまった場合は登記が可能なオフィスを借りる必要があります。
⑤移転・撤去のしやすさ
事業規模が大きくなってくるとオフィスを撤去したり移転したりするケースも多いでしょう。
年契約のオフィスでは、契約を解除する際に違約金を支払う必要があるところがほとんどです。フットワークを軽くして事業を進めたいという方は、バーチャルオフィスやシェアオフィスなど、移転や撤去作業がほとんど要らないオフィスを選ぶのも1つの手です。
⑥オフィスの運営・提供会社
オフィスを運営・提供している会社は複数社を比較したほうがいいでしょう。不動産会社や運営会社など、事業者によって料金設定やサポート体制が細かく異なるからです。
また、同じ物件・サービスであっても、A社とB社では価格が違う……という場合も少なくありません。これは契約金額が大きいほど、影響を及ぼします。自分が納得でき、かつ利用しやすいところを選んでみましょう。
起業時のオフィス選び①:レンタルオフィスとは?
「レンタルオフィス」は、ビル等の一部を借りてオフィスとするスタイルです。
初期費用、維持費は賃貸オフィス(建物をレンタルしてオフィスとする形式)よりも安く、一等地やそれに近しい立地でオフィスを持つことができます。
レンタルオフィスのメリット
レンタルオフィスにはデスクやPCなどの備品を置くことができるため、仕事をしやすい環境づくりがおこなえるのがメリットです。物件によっては、もともとデスクやデスクチェアが備え付けになっているところもあります。
フロントには受付スタッフが常駐している場合も多く、荷物を受け取ってもらえたり、来客対応をしてくれたりするので安心です。
会議室や打ち合わせスペースなどを利用することもでき、商談やミーティングの際に役立ちます。
レンタルオフィスのデメリット
レンタルオフィスは個室を借りるシステムになっており、同じフロア内にはほかの企業のオフィスがあります。そのため、情報漏洩を防ぐにあたってのセキュリティ管理はしっかりとおこなわなければなりません。
また、共用のインターネット回線を利用する場合、通信速度が遅くなってしまうことがあります。アクセスが集中する時間帯や大きなファイルのやり取りをする際などに十分な速度が出ないこともあるため、注意が必要です。また、共用回線がない場合は個別で回線契約を結ぶことになりますので、思いのほかコストがかさんでしまった……というケースもあるのです。
起業時のオフィス選び②:シェアオフィスとは?
シェアオフィスは、1つの空間をほかの人と共有(シェア)するタイプのオフィスです。
座席はあらかじめ決められた席に座る「固定制」と、特定の席を決めておらず好きな場所に座れる「フリーアドレス制」があり、どちらの方式かはシェアオフィスごとに異なっています。
レンタルオフィスのように個室内でオフィスを構えるのではなく、オープンスペースでの作業となるのが大きな違いです。
シェアオフィスのメリット
シェアオフィスはレンタルオフィスに比べると、リーズナブルに利用できるのがメリットです。
また、デスクやデスクチェアはもちろん、コピー機などのオフィス機器が備え付けで置いてあるところも多いです。仕事に必要な什器や機器等をひと通り揃えると結構な額になりますので、もろもろの導入コストを抑えながら起業をしたい方にはぴったりだといえるでしょう。
他には、安価ながらも郵便物の受け取りや会議室を利用できたり、通信費・光熱費も利用料金に含まれていたりといった点もメリットとして挙げられます。
シェアオフィスのデメリット
シェアオフィスは同じフロアを他企業の人と共有するというものですので、当然ながらセキュリティの問題がデメリットになります。特に個人情報などの機密情報を扱うことが多い業種では、リスクがかなり大きいといえます。
また、ネット回線の通信速度の問題も。シェアオフィスの場合、回線を共有することになりますので、アクセスが集中した場合は速度が落ちてしまうことがあります。
オープンスペースを利用するシェアオフィスでは、他の人の会話が気になったり、話しかけられたりすることも案外多いです。人に話しかけられるとなかなか集中できない……という方には不向きかもしれません。
起業時のオフィス選び③:バーチャルオフィスとは?
バーチャルオフィスとは、物理的なオフィス空間をレンタルするのではなく、会社の住所や電話番号等をレンタルする形式です。作業スペースとして自宅やコワーキングスペースなどを利用する必要がありますが、月々の料金が数千円からとかなりリーズナブルに利用できるという特徴があります。
また、プランやオプションによっては、電話対応を代行してもらえるサービスも利用可能です。
バーチャルオフィスのメリット
バーチャルオフィスのメリットは、なんといっても月々のランニングコストが安いという点です。月数千円で都心の一等地の住所を借りることができるのは、バーチャルオフィスならではだといえるでしょう。
借りた住所や電話番号は、会社の名刺に載せることもできます。「一等地に会社を置いている」という印象を与えられるため、ビジネスにもプラスに働く可能性が得られます。自宅住所を会社の住所として使う必要がなくなるため、プライバシーを守りたい方にも適しているでしょう。
また、バーチャルオフィスでは「電話代行サービス」や「郵便受け取りサービス」など、さまざまなサービスが付随したプランを選べるのも魅力です。
電話代行サービスは、外回りや外出が多い事業主に代わって電話応対や内容の連絡などをおこなってくれるというもの。対応時はきちんと会社名で対応をしてもらえるため、先方にも良い印象を残すことができます。
対応後の内容はメールで連絡してもらえますので、忙しいときでも安心です。
ちなみに、バーチャルオフィスには法人登記や法人口座の作成ができるものもあります。
今後の法人化を考えているのであれば、こうしたバーチャルオフィスを利用するとよいでしょう。
バーチャルオフィスのデメリット
バーチャルオフィスは住所や電話番号を借りるサービスのため、作業スペースを借りることはできません。そのため、自宅やコワーキングスペースなどで作業スペースを確保する必要があります。
また、書類等の荷物を置くスペースは、基本プランに入っていないことも多いでしょう。公的機関への申請などをおこなう際には、書類を補完するスペースが必要になります。これに対応するには、バーチャルオフィスで提供しているキャビネットサービスなどに別途で申し込む必要があるのです。
ちなみに、バーチャルオフィスを利用しても、業種によっては営業の許認可が下りない場合があります。
弁護士などの一部の士業や不動産業、人材派遣業などでは、物理的な応接スペースを設ける等の条件が決められているのです。
起業時は事業内容や資金に応じてオフィスを選ぼう!
起業時は事業の内容や資金、従業員数などを考慮しながらオフィスを選ぶことが大切です。
「セキュリティ面に配慮が必要な業種なのにシェアオフィスを選ぶ」などの行為は、何か問題があったときに会社の信用性を著しく損なってしまうことにもなりかねません。
また、人数が少ないのに広いオフィスを借りればランニングコストがかさんでしまいますし、反対に人数が多いのに狭いオフィスを借りてしまうと業務に支障をきたすことがあるでしょう。事業内容や業務の作業方式、従業員数によってはバーチャルオフィスで十分事足りる場合も少なくありません。
本記事を参考にしつつ、事業にふさわしいオフィスの形を見つけてみてくださいね。