バーチャルオフィスを利用すると、納税地はどこになるのか気になる方もいるのではないでしょうか。
納税地は任意で選択可能です。
本記事では、バーチャルオフィス利用時の納税に関して、申請方法からメリットまで解説します。
これからバーチャルオフィスを利用予定の個人事業主の方や企業経営者の方は、ぜひ参考にしてみてください。
納税地は任意で選択できる!
バーチャルオフィスを利用している場合、必ずしもバーチャルオフィスの所在地で納税しなければならないわけではありません。
納税地は、住所地・居所地・事業所等の3つの中から任意で選択可能です。
それぞれの概要は以下のとおりです。
納税地 | 概要 |
---|---|
住所地 | 生活の本拠としている場所 日本国内に住所がある方は、そこが住所地となる |
居所地 | 相当期間継続して居所しているが、本拠とはならない場所 国内に住所はないものの、居所がある人が当てはまる |
事業所等 | 事業ために設けられた人的・物的設備であり、事業が継続的に行われる場所 |
なお、いずれの場所でも納税手続きは各場所所轄の税務署で行います。
納税地をあとから変更することは可能?
自宅の引越しやバーチャルオフィスの変更などによる納税地の変更は可能です。
例えば、もともとは自宅を納税地としていたものの、後になってバーチャルオフィスを利用しはじめた場合、バーチャルオフィス住所を新たな納税地として申請することができます。
ただし、納税地の変更を行う場合は、以下の書類を提出する必要があります。
- 個人事業主の場合:所得税・消費税の納税地の移動に関する届出書
- 法人の場合:異動事項に関する届出
これらの書類は、住所変更前の納税地を所轄する税務署に提出してください。
納税地を変更すると何が変わる?
納税地を自宅からバーチャルオフィスに変更したとしても、特に大きな違いはありません。
納税額に違いが出てくるわけでもなければ、経費の扱いも同じです。
自宅であってもバーチャルオフィスであっても、業務で発生した経費は計上できます。
例えば、自宅の賃料を経費に組み込むことや、バーチャルオフィスの賃料を経費に組み込むことは、どちらも問題ありません。
違いを挙げるとすれば、確定申告を行う際の税務署が変わるくらいです。
ただしこの点に関しても、自宅とバーチャルオフィスを所轄する税務署が同じであれば違いはありません。
自宅を納税地としても、バーチャルオフィスを納税地としても、納税自体に大きな違いはありません。
しかし、バーチャルオフィスの利用には多くのメリットがあります。
ここでは、具体的なメリットとして
- プライバシーの保護
- 自宅物件の契約内容
の契約内容の遵守を紹介します。
プライバシーの保護
バーチャルオフィスを利用すれば、自宅住所を知られる心配がないため、プライバシーの保護が可能です。
法人情報は公開情報であり「国税庁法人番号公表サイト」から誰でも閲覧できます。
そのため、自宅を登記住所としていると、見ず知らずの人に自宅住所を知られてしまう恐れがあります。
住所を知られてしまうと、ストーカーやいたずらなどの被害を被る可能性もあるでしょう。
一方でバーチャルオフィスを登記住所として設定していれば、住所を第三者に知られても特に気にする必要がないため、トラブルを避けて事業に専念できます。
自宅物件の契約内容の遵守
バーチャルオフィスを納税地として設定すれば、賃貸借契約の遵守につながります。
物件を契約する際、住居としての利用を目的として賃貸契約を結んでいるにもかかわらず、その住所を登記住所として利用すると、事務所物件と扱われるため契約違反となる恐れがあります。
一方で、自宅で作業こそ行うものの、正式な登記住所にはバーチャルオフィスを登録しておけば、契約違反とはなりません。
賃貸物件に住んでいる方であれば、無用なトラブルを避けるためにも、バーチャルオフィスを利用した方がいいでしょう。
【個人事業主】バーチャルオフィス住所を納税地として申請する方法
バーチャルオフィスを納税地として利用するためには、税務署に対する手続きが必要です。
ここでは、個人事業主がバーチャルオフィス住所を納税地として申請する際に行う手続きについて解説します(企業の方は次項をご覧ください)。
手続き内容によって所得税の納税地が決まるため、注意してください。
新たに開業する場合:開業届
新たに開業する場合は、「個人事業の開業・廃業等届出書」を納税地を所轄する税務署長に提出しなければなりません。
提出期限は、事業が始まった事実のあった日から1ヶ月以内です。
「個人事業の開業・廃業等届出書」には納税地を記載する欄があります。
自宅もしくはバーチャルオフィスの住所を記載すると、その住所を所轄する税務署が所得税の納税先となります。
「個人事業の開業・廃業等届出書」は、国税庁のホームページからダウンロード可能です。
なお、住民税は住所地のある自治体に支払うため、開業届とは関係ありません。
移転する場合:所得税・消費税の納税地の移動に関する届出書
バーチャルオフィスの変更や自宅の引越しなどにより事業所の拠点が変更となる場合は、「所得税・消費税の納税地の移動に関する届出書」を拠点変更前の住所を所轄する税務署長に提出します。
提出は、納税地の移動後遅滞なく行うこととされているため、速やかに対応しましょう。
「所得税・消費税の納税地の移動に関する届出書」は、国税庁のホームページからダウンロード可能です。
【法人・企業】バーチャルオフィス住所を納税地として申請する方法
法人・企業がバーチャルオフィスを納税地として利用する場合も、税務署に対する手続きが必要です。
ここでは、法人や企業がバーチャルオフィス住所を納税地として申請する際に行う手続きについて解説します。
手続き内容によって法人税の納税地が決まるため注意してください。
新たに法人設立する場合:法人設立届出
新たに法人を設立する場合、以下の書類を納税地を所轄する税務署長に提出しなければなりません。
- 法人設立届出書
- 源泉所得税関係の届出書
- 消費税関係の届出書
また上記の書類に加え、必要な場合は以下の申請書や届出書を同じく納税地を所轄する税務署長に提出します。
- 青色申告の承認申請書
- 棚卸資産の評価方法の届出書
- 減価償却資産の償却方法の届出書
- 有価証券の一単位当たりの帳簿価額の算出方法の届出書
「法人設立届出書」には納税地を記載する欄があり、自宅もしくはバーチャルオフィスの住所を記載すると、その住所を所轄する税務署が法人税の納税先となります。
「法人設立届出書」も、国税庁のホームページからダウンロードできるため、必要な方はダウンロードしてください。
なお、法人住民税は事業所ある自治体に支払うため、法人設立届出書とは関係ありません。
本店移転する場合:異動届出書
法人の本店としているバーチャルオフィスを移転する場合、「異動事項に関する届出」を移転前の住所地を所轄する税務署長に提出しなければなりません。
こちらの書類を提出すると法人税の納税先も移転先の住所地を所轄する税務署へと変更となります。
提出は、異動後速やかに行うこととされているため、遅滞なく対応してください。
「異動事項に関する届出」も、国税庁のホームページからダウンロードできます。
まとめ
今回は、バーチャルオフィス利用時の納税地がどこになるのか、バーチャルオフィスを納税地として利用する際のメリットなどについて解説しました。
バーチャルオフィスは納税地として利用可能であり、後から納税地を変更することもできます。
納税地を変更する際は、今回紹介した届出書を納税地を所轄する税務署長に提出する必要があるため忘れないようにしましょう。